ハワイで「べーシック・インカム」の導入が本気で議論されている

6月にハワイの州議会を通過したべーシック・インカム作業部会。その設立を決めた法案には、その理由がこう記されている。

「アメリカは世界でも最も裕福な国であるにもかかわらず、一部の高額所得者と中流・下流層との間にある経済的な不平等さが格差を広げるなか、ハワイ州の多くの家族、個人、そしてビジネスが、生活コストの増加に合わせていくのに、もがき苦しんでいる。しかも中流・下流層の全体的な収入もここ数十年で減少している」

そんな状況で、さらに追い打ちをかけるように、新たなテクノロジーによる雇用破壊という要素が加わることになる。各自動車企業がしのぎを削っている自動運転テクノロジーや、スーパーマーケットなどで導入が進む自動支払いシステム、通販などのEコマース、医療検査、銀行送金や支払いなどでは、すでに人の手が必要でなくなりつつあることはご承じの通り。

特にサービス業に依存しているハワイのような州では、こうした革新的なテクノロジーの到来で、何十万人もの仕事が奪われると指摘する。しかも、「3Dプリンターの値段が過去10年で1万5000ドルから500ドル以下になった」ように、それが瞬く間に現実になると警鐘を鳴らしているのだ。ハワイ州特有の事情から、その対策として、ベーシック・インカムが必要になる、というのだ。

さて、ベーシック・インカムのアイデアは特に新しいものではなく、米国でも古くはリチャード・ニクソン大統領が68年から3年間にわたり、ニュージャージー州とペンシルベニア州の1300世帯で実施したことがある。だが結局は導入するには至らなかった。導入への慎重派は、財源もさることながら、市民が堕落することを反対理由として指摘している。

今改めて注目されているベーシック・インカムは、世界を見渡せばすでにいくつかの地域で試験的な導入が始まっている。カリフォルニア州のオークランドでは100世帯に月1500ドルを配るという実験を行なっている。

フィンランドは2016年から、ランダムに選んだフィンランド人2000人に1人につき月560ユーロ(約587ドル)を無条件で提供する2年間の実験を開始している。2017年4月には、カナダのオンタリオ州が3つの地域の4000人に、1人に月1400ドルほどのベーシック・インカムを渡す試験を実施すると発表している。

ハワイ州では、世界の実験結果なども考慮しながら、ベーシック・インカム導入に関する議論が続けられることになる。最大の課題は財源だろう。

現在ハワイ州の貧困ラインは1人の年収が1万3860ドル。仮に成人人口(18歳以上)の約105万人が全員、1万3860ドルを受け取るとすると、ベーシック・インカムの費用は年間で144億ドルほどになる。富裕層の税金を増やすという案もあるようだが、今後、それをどう賄うのか、試算などを繰り返すことになるという。

今回の法案の文言を読むと、ハワイの切迫感はどこよりもその必要性を強く感じられるものである。財源をどうするのかをはじめ、検討すべきことは山のようにあるはずだが、ハワイにとっては、「その時」が来るのはそう遠くはないのかもしれない。

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